眼科へ行ったらこどもが「弱視」だと言われてびっくりした人は意外に多くいます。
弱視ってどういうこと?治るの?などこれからの治療を心配している人に向けて、弱視が治るのかについて解、そして診断されたら知っておくべきことについて解説していきます。
この記事では弱視とは何かを知り、治療や注意点を知ることで治すためにはどうしたら良いかを理解でき、今後どうしていくべきかがわかるのでぜひ読んでみてください。
現在約15年目の現役視能訓練士です。
眼科で検査をおこなうための国家資格を保有しています。
まさか自分の子供が弱視なんてとびっくりするご両親が多くいて、動揺される方も多いのでこの記事に弱視についてまとめてみます。
弱視とは
片眼もしくは両眼の視力がメガネで矯正しても1.0に満たない場合を弱視と診断されます。
メガネで矯正して視力が出る場合は弱視ではありません。
弱視の種類と原因
弱視は主に以下の5つに分類されています。
弱視の種類 | 原因 |
屈折異常弱視 | 強い遠視や乱視、まれに近視 |
不同視弱視 | 右眼と左眼の度数に差がある |
斜視弱視 | 斜視になっている眼が弱視になる |
微小斜視弱視 | 斜視になっている眼が弱視になる |
形態覚遮断弱視 | 白内障など眼の疾患による |
屈折異常弱視
強い遠視や乱視、まれに近視によって弱視を引き起こします。
この多くは両眼とも弱視になっているケースが多いです。強い度数により自分でピント合わせなどの調整ができず弱視となっていきます。
不同視弱視
右眼と左眼の度数の差が大きいことにより、片方の眼でしか物を見なくなることで弱視を引き起こします。
どちらかの眼が強い遠視、まれに近視を起こすことが多く、もう片方の眼はあまり遠視や近視もなく問題ないのでそちらの眼でばかり物を見て、使わない眼が弱視となっていきます。
斜視弱視・微小斜視弱視
斜視といって眼の位置が内や外に向いている状態によって弱視を引き起こします。
斜視の多くは片方の眼がまっすぐ向いていて片方が内か外に向いているので、まっすぐ向いていない眼で物を見なくなり弱視となっていきます。
*これは斜視の治療も合わせておこなっていきます。
形態覚遮断弱視
白内障などの眼の疾患によって物を見ることを遮断されてしまい、視力をつかさどる細胞が成長しないことで弱視を引き起こします。
遮断されている原因を取り除くことが第一優先になりますが、白内障などは手術が必要なので医師の診断や判断によって弱視治療をおこなえるかどうかは変わってきます。
本当に見えていないの?
見た目からは弱視はわかりにくく、こどもも「よく見える」と「よく見えない」という感覚もいまいちわからないため見えない事に対する訴えはほとんどありませんが、弱視と診断されたからにはしっかりとは見えていないことは事実です。
特に片眼の弱視だともう片眼が見えるので生活上不便はありませんが、両眼弱視の場合はこどもの行動を観察しているとよく物にぶつかったりすることはありますのでお子さんの動きも見てみると思い当たることがあるかもしれません。
弱視は治るの?
弱視の原因となるものによりますが、治療をしっかりおこなうことで視力1.0まで回復する可能性はあります。一番のポイントは3~4歳くらいから治療を開始できるかどうかですが、6歳になったからもうおしまいだと悲観することもないです。ただし8歳を超えるとなかなか難しくはなるので、早めの治療を意識してください。
また、治療はご両親の協力があっての上で結果が左右します。眼科に通っていたら治るものではなく、日々の生活での治療がメインなので、医師に言われた通りにおこなってください。
弱視の治療について
弱視の治療は生活の中でおこなうものですが「そんな難しいことできない・・!」と思った方も安心してください。大変かもしれませんが、難しい事はないので治療に取り組んでみてください。
目標
最大の目標は両眼ともに視力1.0以上、3Dなどの立体的に物が見える状態になることです。
立体的に物が見えるには両眼ともに同じくらいの視力が出ていなければならない上、立体的に物が見えるように機能している細胞の成長が2~3歳頃がピークで、その後は成長しなくなりますので成長時期には治療していたいところです。
なるべく早めに治療を開始して、弱視を回復させ、立体的に物を見る力もつけられるようにすることが目標です。
検査
3歳くらいの小さいこどもは自覚的に視力検査でお答えができないことも多いですが、まずは視力検査をします。そして他覚的にどのくらいの遠視や近視、乱視があるかを機械と目薬を使って検査します。
目薬の検査の事
こどもはピント合わせの力がとても強いので普通に検査している間も無意識にピント合わせをしてしまい、それにより本来持っている遠視や近視、乱視度数が正確に測定できない事が多くあります。そのため、点眼薬を使用してピント合わせの力をお休みさせて、正しい度数を調べます。
度数が分かると、弱視の原因、程度などがおおむねわかりますので診断がつきます。
この目薬の検査をおこなうことで「まだ小さいので視力検査が難しいだけで弱視ではない」という診断が出ることもあります。
なので弱視だと思っていたら検査の理解の問題だけで数カ月したら視力検査問題なかったなんてこともありますよ。
治療開始【メガネ】
もし弱視だと判定された場合は、待つことなく治療を開始します。
治療の基本は「メガネ」です。こどもの眼の度数ぴったりのメガネを毎日休むことなくかけることが治療ですので、すぐに処方箋を出されますので眼鏡屋さんでメガネ購入してできあがったらすぐにかけ始めてください。
中には「絶対に眼鏡だけは避けたい・・!」と強く希望される方もいますが弱視にはメガネ治療が必須です。
気持ちはわかりますが、親のメガネ拒否の気持ちがこどもの将来の視力を奪うこととなるので、頑張ってメガネをかけるようにしましょう。
街で見かけるメガネをかけている子に対して「早期発見してもらえたんだね、メガネで良くなるよ、ご両親ありがとう」と心から思います。
もう一つの治療【アイパッチ】
中にはメガネだけでは治療が思うように進まない場合もあります。
そういったときは「アイパッチ」と言って視力の良い方の眼を数時間隠して、弱視の眼で物を強制的に見るようにする治療へと進む場合もあります。
注意点
弱視の治療中の注意点がいくつかあります。
幼稚園や保育園での協力
治療中の多くのこどもは日中幼稚園や保育園に通っている年齢なので、保育士さんの協力も必須です。
「遊ぶとき危ないので外しますね」と日中メガネを外して生活されては治療になりません。基本は常にメガネをかけておかなければならないので、先生にはきちんと説明しておくと良いでしょう。
以前、副園長さんに「最近メガネの子どもが多いけど、保育士として知っておくことはありますか?」と質問されたことがあります。
基本的には協力体制を整えている場所が多いので、しっかりと先生に治療のお話をしておいてください。
こどもの心理的影響
3歳くらいの小さいこどもだとただ単純にメガネがいやだと泣き喚く場合もありますが、何も言わずに追い詰められてメガネをかけていることが苦痛でふさぎこんでしまう子供もたまにいます。
治療のためには嫌がっているからとメガネをかけないわけにはいきませんが、こどもの気持ちにも気にかけながらしばらくは様子を見てあげてください。
小学生などで、クラスにメガネをかけている子が多く自分もメガネ欲しいと強く思うだけで、視力が出なくなったします。
そういった精神的な一面が思わぬところで出現することもありますので、丁寧なケアはとても大切です。
メガネのメンテナンスは定期的に
こどもはよく動き回りますし活発なので、メガネをよく壊しますし歪むことも多くあります。
メガネのレンズの真ん中部分にぴったりのこどもの眼の度数が入っていますので、基本的にはレンズの真ん中を通して物を見る事が理想です。メガネがずれ落ちてしまってはメガネをかけていないのと変わらないので気をつけてください。
実はメガネ選びもとても大切です。
メガネ自体に鼻あてや耳あてがあること、メガネ屋さんにメンテナンスを無料でおこなってくれるか保証期間が長めになるかなども重要なポイントです。
定期的な受診が大切
弱視の治療中は、視力が改善してきているかどうかの定期的な確認が重要です。メガネかけているから安心というわけではなく、視力が改善していなければアイパッチを開始したり、再度目薬を使って眼の度数を確認したりとその時に応じた対処が必要ですので、言われた通りに診察・検査に通うようにしてください。
まとめ
こどもの弱視について、治療や注意点など診断されたら知っておくべきことをまとめました。
医師に診断されたときはびっくりしますが、そのあとの行動が大切なので落ち着いて治療へと進んでくださいね。