視能訓練士になるには三年間もしくは四年間学校に通って勉強し、国家試験を受けて資格を取得する道が一般的ですが、「一年で視能訓練士になれる」という学校も存在します。
ただし、確かに一年間学校通って資格取得を目指す方が早く視能訓練士になれますが、通常数年かけて勉強して資格取得することを考えると一年制の学校は相当ハードであることは予想されます。
そこで学校は三年制や大学に通った方が良いのか、自分が本当に一年制の視能訓練士の養成校でやっていけるのかどうかについて、不安だったり迷っている方に向けて実際一年制の学校に通った複数の方に体験談を聞いたのでまとめてみました。
一年間の学校生活や私生活、勉強や就職活動についてきつい・つらいこと、本音を聞けましたのでぜひ今後の参考にも読んでみてください。
約15年目の現役視能訓練士です。
自分も含め社会人から視能訓練士を志した人をたくさん見てきました。
「きつい」ことは間違いなし、でも「何が?」についてしっかり書いていきます。
【注意点】
2023年6月現在、一年制の視能訓練士養成校は東京に2校、大阪に1校あります。
この記事では、東京の高円寺にある・日本医歯薬専門学校に通ったことのある方からのお話を元に書いています。他2校にも大きな違いはないものの、スケジュールに関しては多少の違いがありますので各自学校案内を確認してください。
また、感じ方は人それぞれだということも頭に入れながら読んでいただけたら嬉しいです。
一年制の学校で視能訓練士になる道のり
まず最初に一年制の視能訓練士の養成校に入学をするための準備が必要です。
あらかじめ入学前に必要単位を取る
高卒の方と大卒の方ではすでに履修している単位数が違います。一年制の視能訓練士の学校に通うためには事前に履修しておかなければならない単位があり、単位が取得できていないと視能訓練士はおろか一年制の視能訓練士の学校にも通うことはできません。
現在考えている一年制の学校に自分の取得している単位を報告すると足りていない単位などを教えてくれるので、足りていない単位は放送大学などで取得しておく必要があります。
三年制や四年制の視能訓練士養成校に通う場合は、高校を卒業していれば入学前に取得しておかなければならない単位はないと考えていて問題ありません。
入学するための手続きをする
学校によって違いがありますが、提出書類をそろえて願書とともに提出し、入試を受けます。
最終学歴のある学校に卒業証明書を取り寄せたり、足りない単位を取得したりすると時間がかかりますので遅くとも通い始める前の夏までには行動を移していかないと間に合いません。
AO入試があるところは比較的日程も早く行われ、一般入試も11月頃から始まります。
オープンキャンパスや学校への問い合わせも必ずおこないましょう。
事前準備に時間がかかるので、余裕を持って行動することをお勧めします。
学校生活・一年間の流れ
次におおまかな一年間のスケジュールです。
座学・4~8月
とにかく時間がありませんので急ピッチで勉強が進んでいきます。
まず最初の4ヶ月間で座学の勉強をひたすらおこない、並行して検査機器を実際触って検査ができるように練習していきます。
通常、年単位で学習することをたったの4か月で勉強します。
それと同時に国家試験の勉強もするように言われますので勉強に追われる毎日です。
病院実習・9~12月
夏があけたらすぐ病院実習にいきます。だいたいの目安ですが、8週間ほどの期間を2カ所の病院にまわるので約4か月間の病院実習です。
この病院実習中も登校して授業を受ける日があるので基本休んでる暇はありません。
国家試験・2月
病院実習が終わり年が明けたらあっという間に国家試験が迫ってきます。
ちなみに就職活動は、求人が9月頃から出始めるので実習中や国家試験のための勉強中に並行しておこないます。
余談ですが、3年制の学校では2年間かけて勉強、1年間で病院実習と卒業研究をおこなう日程のところが多いです。病院実習も1年制のように年末まででなく、もう少し早めに終わるので比較的勉強や就活の時間の確保ができます。
学校生活・一日の流れ
次に一日のスケジュールはどんな流れなのか見てみます。
*一年制の3校の学校、それぞれ授業時間が違いますが、ここでは東京・高円寺にある日本医歯薬専門学校のスケジュールを元に体験談を書いていきます。
授業時間
日本医歯薬専門学校では、だいたい18時から21時に授業がおこなわれるため、昼間の時間はフリーです。
正社員として時短で働く人やアルバイトする人、勉強に専念する人、時間の使い方は人それぞれです。
*東京医薬看護専門学校・大阪医療福祉専門学校の2校は9:00~17:00などの昼間の時間帯の授業なので、夜間の時間帯がフリーになります。
もともと眼科で検査員として正社員で働いていましたが、パートに切り替え学校に通っています。
思い切って仕事を辞めました!でも生活が心配なのでアルバイトを細々としています。
実習中はアルバイトできなくなりますので実習までの数か月の短期間アルバイトです。
自習・復習
授業内だけでは到底理解が追い付かず、主に復習が必要なので授業後深夜まで勉強を続ける人が多いようです。
思ったよりも勉強内容が難しく、でも立ち止まることなくどんどん進んでいくので、仕事をしている人は辞める人もちらほら出てきます。
眼科で働いていたのでそれなりに勉強内容はわかっていると思っていたのに、こんなに勉強が難しいなんて!
これは視能訓練士さんとの差があって当然だと感じました。
パートで働いていたけど、今は結局休職しています。
あいてる時間に機器を使用して検査練習
授業で学んだ座学に加え、検査もできるようにならないといけないため機器を使用して検査練習も併せておこないます。
機器を使った練習は予約制なので、日程を調整しなければなりません。
仕事しながら1年間で資格取得って、やっぱり大変。
通っていて大変なこと
在学生・卒業生がよく言う内容というと「きつい」「つらい」「大変」という言葉です。
具体的にどんなことがきつい・つらい・大変なのかは以下のようです。
意外に勉強が難しい
1年間で資格取れるくらいだし、眼科だけのことならそんなに難しくないかな?とにかく1年間で医療国家資格ってすごくいい!なんて思っていると後で地獄を見ます。ものすごく難易度が高いわけではなく、内容もすごく難しいわけではありませんが、それでも「なんとかなるだろう」と甘い気持ちでいるとすぐに心は折れます。
眼科経験者が目のことをそれなりにわかっている人でも改めて資格取得のための勉強をすると、覚えることの多さや意外に複雑な内容にびっくりする人が多くいます。
仕事しながら通うのはかなりハード
生活費も心配だし学費もあるしと仕事を手放さずに学校に通うと、やはり時間のやりくりがうまくいかず勉強もついていけなくなるという負のループに陥るようです。ただ、実習中を除き仕事を辞めずに卒業できている人も少なからずいるので、ハードだけど乗り切れる人もいます。
よくある疑問点
一年制の学校に通う前に感じていた疑問点について、通いだしてから知ったことや感じたことを聞きました。
通っている人の前職と年代は?
3割くらいは眼科経験者で、その他は全く関係ない職種の方が通っています。年代も上は40代くらいや男性もいます。中には子育て中で離職している人もいたり、意外に様々な人が集まっています。
*その年によっても違いがあるようです。
先生は厳しい?
厳しいというより、「君たちには時間がない」と言ってどんどん勉強は進んでいき、圧力をかけてます。
勉強はついていける?
授業中のみでは覚えたり理解することは難しいので、必ず復習の時間を確保してしっかり勉強すればついていけます。ですが、復習せずにいるとどんどんついていけなくなりますので、自宅学習が大切です。
わからない時のサポートは?
質問すると答えてくれますが、こちらから問いかける必要があります。テストも頻繁におこなわれるので、点数が取れていない人に対して何かしら先生から指摘があるのでしょうけど、基本的には自主的に動けば返答してくれるスタンスです。
完全な眼科未経験でもできる?
完全な眼科未経験者の生徒さんも多くいるので、誰でも始めることはできます。その後の努力は本人次第なのと眼科に興味を持っていないとなかなか頭に入ってきませんが、本当に眼科に関わりたい気持ちがあれば問題ないです。
仕事は辞めるべき?
時間のなさを考えると辞めることをお勧めしますが、生活などもあるのでアルバイトやパートにするなど時間は調整した方が良いです。病院実習中は仕事には行けないので、休職ができないなら最初から辞めてもいいかもしれません。
一日時間勉強している?
授業時間を除いて4時間ほどは復習にあてていましたが、それでは全然追い付かずに平均すると8時間くらいは勉強しています。国家試験の勉強も並行したり検査練習もあるので、結局1日中勉強しているような状態です。
途中で断念して辞める人はいる?
その年にもよりますが、少なからず辞める人はいます。無事に卒業・就職できても数か月で退職する人も2~3人はいます。
途中で辞めたり、数か月で退職する人の特徴としては「自己分析をきちんとできてなかった」ように感じます。
眼科という職種についてしっかりリサーチして、本当に自分のやりたいことなのか、興味があるのかをよく考える必要があります。
「1年で医療の国家資格」「この資格があれば安定」なんて理由では、途中で断念することが多いのでよく考えてみてください。
まとめ
視能訓練士の一年制の学校について、在校生や卒業生の声の含めまとめてみました。
きつい・つらい・大変はその通りですが、本人のやる気と熱意があれば十分に目指せる職種ではあります。
甘い気持ちではなく、本当に眼科に興味があるのか、自分のやりたいことなのかの自己分析をおこない、それで視能訓練士を目指すと決めた人なら問題なくできますのでぜひ頑張ってみてください。