将来の事を考えたときに「視能訓練士」という職業を知ったけど、医療の国家資格ではあるようだけどあまり聞きなれない職業だし、調べてみると「後悔」とか「やめとけ」とかいう意見があったりします。
そこで現役視能訓練士の私が、現場で感じていることを正直にお伝えします。悩みなどを知ることでリアルな視能訓練士の想いを知ることができますよ。
視能訓練士になろうか迷っている人であれば、視能訓練士の現実や本音、本当に後悔するのか・志すのはやめた方が良いのかがわかりますので最後まで読んでみてください。
現在約15年目の現役視能訓練士です。
私自身、社会人枠に視能訓練士の養成校に入学しました。
視能訓練士になろうかどうか悩んでいる人に、ぜひ視能訓練士の現実を知ってもらいたいです。
約15年目の現役視能訓練士として働く自分について
あくまで私個人の見解を述べてみます。人によって感じ方は多少違うかと思いますが参考にしてみてください。
社会人から視能訓練士を目指した
高校卒業後は深く考えずに行きたい大学に行きましたが、その後の将来の自分について初めてよく考えたときに、将来結婚して子供を生んでも働きたい、国家資格って強いなと思った時がありました。
母親も看護師ですし漠然と看護師になれたらなと思った中で、自分に眼の疾患があることでずっと興味があった眼科に将来勤めたいと思うようになったのです。その時に、視能訓練士という眼科専門の国家資格がある事を知り「これは私が求めている資格だ」と運命を感じました。
その後はとんとん拍子で、社会人枠の視能訓練士養成校に入学し、勉強、国家試験を合格し晴れて視能訓練士として働き始めました。
後悔したことはある
正直後悔はしょっちゅうしていて、看護師の資格を取れば良かったと思う事ばかりです。
視能訓練士ってあまりにもマイナーな職なので病院の中での立場もないですし、給料だって低いし、できることの範囲もかなり限られてしまっています。でも私は眼の専門家になりたかったので、看護師になってもきっと眼科希望でしたし、眼科で働くのであれば眼の事をとことん知りたくなるだろうから結局は視能訓練士という職業に行きついていたのだろうと感じます。
立場や地位がほしいわけじゃなく、給料だけでもなく、自分のやりがいややりたい事、勉強したい事、眼のことで誰かのためになること、そんな事を優先して仕事をしたいから、私は視能訓練士になって良かったです。
仕事で何を得たいか考えることは大切ですね。
お金も大事なんですけどね。どうせ働くなら給料高い方が良いし・・
現在の気持ち
きっと視能訓練士になって良かったとは感じますが、それでも感じる立場の低さ、持っている知識量や技術に見合わない給料の低さ、それはおそらくずっと不満に感じるでしょう。
でも給料をもらえる職業に就けても楽しくない仕事だったらとっくに仕事はやめているでしょうし、約15年続けられているので良しとします。
以上、私個人の紹介をさせてもらいました。
次からは一般的に視能訓練士同士で話してる中でみんなが思っている本音についてお伝えします。
現場で視能訓練士が感じる後悔について
では次に一般的に視能訓練士が感じていること、主に後悔している内容を正直に書きます。
マイナー職
医療職なのに医療職の方からの認識もかなり低い視能訓練士なので、何の仕事をしているかも認識されてないことが多いです。
「検査員です」というと、「あぁ、臨床検査技師さんね」「いやいや眼科の検査です」なんて会話はよくあり、眼科では資格を持った人が検査しているということ自体知られてなかったり、無資格でもできるでしょ、看護師さんが検査してるわけじゃないの?なんてことが一般常識になっているくらい、視能訓練士はマイナーな職業です。
マイナーだからこそ立場も低いです。
正直、眼の事は看護師よりも詳しいのに眼科内でも低い立場に立っています。
給料低い
あまりにマイナーすぎるのか、眼の事に関しては眼科内で医師に次ぐ知識量を持つ視能訓練士でもほとんど評価されないので給料は低いです。
どんなに仕事量を任されても高度な知識を必要とする事をおこなっても、ほとんど評価されないのが実態です。医療職だから給料は安泰だねなんてことは視能訓練士にはないに等しいのではないのでしょうか。
検査なんて無資格の人でもできると視能訓練士の評価をしない医師もいるので、眼科に視能訓練士がいない所もあります。
でも中には視能訓練士を高く評価して「正しい診療・診断するための強い存在」として頼ってくれる医師もいて、そういう病院はお給料も高めに設定してくれることがあります。
出会った視能訓練士さんから聞いた最高時給は5000円です。
ただし一般的には時給2000円前後ですし、いきなり高額は期待できないですが、積み重ねで届く可能性は十分にあります。
条件の合う就職先が少ない
都心であれば条件を気にしなければ求人は常にありますので就職できない事はないでしょう。
ですが都心を離れると眼科の数自体も減り、視能訓練士も辞めない限りは求人も出されないので就職活動はなかなか厳しくなります。また、都心で求人数が多いと言っても20時まで開院していたり、土日祝も診察している所も多く子供がいる女性だとなかなか飛びつくことができないので、条件の合う就職先を見つけるのは難しく感じます。
17時まで、土日祝休みの病院の求人は限りなく少ないです。
きっとそういう所は視能訓練士が辞めないのでしょうね。
無資格でもできると言われてしまう
視能訓練士以外の人は口に出さなくてもおそらく多くの人が「視能訓練士でなくても眼科検査ってできるよね」と思っています。
たしかに無資格でも多少やり方を覚えれば検査もできますし、命に関わる内容でもないので多少の間違いも大きく言われないでしょう。視能訓練士でも視力検査を正しくおこなうには3年かかるといわれるくらい奥が深い検査ですが、一般的にはそう思われないようです。
視能訓練士としてはしっかり勉強してきた人と無資格では雲泥の差があると感じますし、症状や症例に対してきちんとした検査結果を出すことまで考えるとやはり視能訓練士は知識が豊富なので正確です。
が、まわりはそんなことまで気にしないのでしょう。
人間関係
女の職場だから人間関係がどろどろしていそうという世間の目もありますが、どこにでもある人間関係と同じです。
男性視能訓練士がいてもドロドロしている所はありますし、女性しかいなくても快適な職場もあります。人間関係が大変そうだからという理由で視能訓練士を避ける必要はないです。
職場に視能訓練士が少なく休みにくい
大学病院であれば視能訓練士が10人くらいいたりしますが、個人眼科だと1人か2人しかいないところも多くあります。そうなると何かあった時にとにかく休みにくいです。もし子供が熱を出したなんていう突然の休みは反感を買うだけかもしれません。
夜勤がなくて良い
眼科によっては20時まで診察している所もあって勤務時間が長かったりしますが、夜勤をする視能訓練士は聞いたことがありません。医療職は夜勤をしなければならないことも多くありますが、視能訓練士が夜勤をすることはまずなく日勤のみなので年齢を重ねても体力が続かずに辞めざるを得なかったなんてことは起こりません。
良いこともあり!結婚や出産で仕事を離れても再就職できる
視能訓練士も国家資格ですので、一度習得した技術は一生ものです。
結婚したり子供を生んだり、旦那様の転勤や親の介護など仕事を離れなければならない状況になる可能性は大いにありますが、一度現場から離れて時間があいて資格を持たない人よりも再就職はしやすいです。またパートであれば割とすぐに見つかりますし、時間も日勤のみなので女性には働きやすく融通の利きやすい職業です。
しかも視能訓練士の有資格者は2022年現在20000人弱の、希少な国家資格です。
条件や場所を考慮しなければ視能訓練士は足りていない状態なのでパートでも来てほしいという病院は多くあります。
将来性について
視能訓練士の仕事内容はやはり人が必ずおこなうものなので、AI化が進んだところで視能訓練士の職業はなくなりません。また眼科医1人に対し3人の視能訓練士が必要だと言われている中、眼科医は2022年現在14000人ほど、視能訓練士はまだ20000人弱なのでまだまだ足りていません。専門性の高い医療を提供するにはしっかりと眼に関して知識の備わった人材は必要なので、今後飛躍的に注目される職業ではないものの、廃れてなくなるものではないと感じています。
**こちらに将来性についての記事を書いています**
視能訓練士になるのは後悔するからやめとけ?
ここまで読んできて、視能訓練士の良い所も悪い所もあるので視能訓練士になるべきかならない方が良いかどうしたら良いかの判断も難しいでしょう。なので個人的な見解でおすすめの人、向かない人の特徴を挙げてみます。
こんな人にはおすすめ
純粋に眼に興味がある人は目指してみてほしいです。勉強するとわかるのですが、眼という小さい器官の中には奥深いことが多くつみこまれていてとても面白いです。あとは子供の眼の訓練に関しては視能訓練士以外は誰にもできない分野なのでこのあたりに興味がある人は視能訓練士の魅力にはまっていくでしょう。
ただし、住んでる近くに眼科の求人があるか、視能訓練士の養成校があるか事前にしっかり調べましょう!資格を取っても就職先がなければ意味がありませんので、いずれ都心の近づくことも想定しておいた方が良いです。
給料とかよりも「視能訓練士」という仕事にやりがいを感じる人でないと続かないですが、視能訓練士として働ける場所がないと元も子もありませんので気を付けてくださいね。
**視能訓練士のやりがいについても記事を書いています**
こんな人はやめといた方が良い
国家資格の中では一番簡単そう、眼科勤務って楽そうだし、なんて気持ちの人は向きません。思ったよりも給料も低いし医療職の立場も低いですし、その中で仕事のやりがいを感じなければつまらなく感じおそらく続かないでしょう。視能訓練士でなく違う職業を見つける事をおすすめします。
特に1年生の視能訓練士養成校に通うかを迷っている人で「一般企業に勤めたけどなんか合わなかった、国家資格の中で視能訓練士が楽そうだし1年で資格取れる」という安易な気持ちで視能訓練士養成校に入っても勉強量の多さに脱落する人、資格取っても意外に大変だったと数カ月で辞めた人もいますよ。
仕事に手軽さを求めるのではなく、自分がどうしたいかどうなりたいか、一般企業に合わなかった理由をしっかり自己分析すると目指す先は視能訓練士ではないと見えてくるかもしれません。
視能訓練士になったことを後悔しない方法
どういう工夫をすることで後悔せずに楽しく働くことができるのかいくつかポイントを挙げていきます。
眼に興味を持つ
視能訓練士なんだから眼に興味があるのは当たり前と感じるかもしれませんが、眼科領域を勉強していてもキリがないくらいどんどん新しい機械や研究が進んでいくので永遠に勉強する日々です。資格を取った時の知識だけでは長く働けず、眼に興味がないと新しいことも頭に入っていかないので「眼に興味を持つ」事は大前提に感じます。
なんでもできる視能訓練士になる
これは最初の就職先が重要でしょう。視力や視野だけでなく、GPや斜弱検査ができる視能訓練士は重宝されますし、無資格の人との差ができるところです。色んな機械や症例に触れることはとても大切なのでそういう病院にまず就職してまずはどんなに辛くても鍛えられましょう。そうするとその後転職したり復職する時に、なんでもできる視能訓練士は強いです。
転職や副業もおすすめ
一つの病院に長く勤めることも悪くないですが、他の病院をのぞいてみると見たことのない機械があったり、医師の専門によっては見たことのない症例に出会うこともできますので転職はスキルアップになります。また、無理に転職をしなくても副業が可能であればパートでたまに違う病院をのぞいてみると世界が広がりますのでおすすめです。
私は企業の健診のパートや3歳児健診に行ったこともあります。
お給料をもらいながら違う分野の眼科を知れて医師や視能訓練士とのつながりも増えましたし、勉強にもなりました。
やりがいをみつける
人によってやりがいはいろいろですが、研究したり眼科内の知りたい分野の勉強会に参加したりすることでモチベーションが上がったりします。生活のためと淡々と働き続ける方ももちろんいますが、せっかくの専門職で日進月歩の領域、やりがいはいくらでも見つけられる分野なのでやりがいがあると仕事も楽しくなります。
まとめ
視能訓練士になって後悔するかどうかについての本音をお伝えしました。
個人的には、あまりにマイナーな職なだけに肩身の狭い思いや十分な満足を得られない人が一定数いるので「後悔」したり「やめとけ」とアドバイスする人がいるのだと感じます。ですが自分の人生は自分のもので、やりたい事や興味のある事に対して自分がどう行動にうつすかによってとても楽しいワークライフを送ることができます。
視能訓練士の実態について少しでも伝わって今後の参考になれれば幸いです。