将来、AIによって様々な職種の仕事がなくなるだろうといわれている中、視能訓練士の職はどうなっていくのか・きちんと働き続けられるのか・需要があるのかなど疑問や不安に思うこともあるでしょう。
そこで視能訓練士として働く中で、将来仕事がなくなるのか、たとえ仕事がなくならなくてもどうしたら働き続けられるかについて現役視能訓練士の観点からお話してみます。
約15年の視能訓練士歴の中で、眼科の視能訓練士の在り方の変化や辞めていく人などをたくさん見てきました。
視能訓練士という職業の将来性と、自分が視能訓練士として働き続ける秘策がわかりますので、ぜひ読んでみてください。
約15年目の現役視能訓練士として働いています。
自分だけでなくまわりの視能訓練士の考えや働き方などから参考に、視能訓練士の現在から将来性について書いていきます。
視能訓練士の将来性について
ただでさえ認知度の低い視能訓練士ですが、このまま視能訓練士として将来も働き続けることができるのでしょうか。心配ごとと合わせて考えていきます。
需要はあるのか
現場からの観点としては、需要はまだまだあります。資格のない検査員より視能訓練士を求める医師も多いのですが、求人を出してもさっぱり人が集まらないという声は多くあり、視能訓練士の確保には苦労している印象です。
ただしこれは「都心で働く」「視能訓練士としてのキャリアのある人」の不足を訴えており、事実地方では求人があまり見当たらなく、視力検査しかできない人を求めているわけではありません。
医師が視能訓練士が欲しい理由として、GP(視野検査)や小児検査ができる人を必要としています。
就職できるのか
都心であれば、選ばなければ就職ができないということはないでしょう。
求人を見ていると「この眼科の求人ずっとあるから、人の入れ替わりが激しく変な職場なのかもしれない」と思われるかもしれませんが、実は単純に「求人が全く来ない」から出し続けるしかないだけです。
完全に条件が合う求人を見つけることは難しいですが、多少妥協しながら選択すると都心であれば就職先は見つかります。
給与はあがるのか
正直、給与が劇的に良くなることはないと考えていいでしょう。
どんなにスキルを持ち合わせていても、「病院」という組織は「個人の評価」をしません。そのためできる人でもできない人でも全員が一律に一年に一回程度の少しづつの昇給があるくらいです。
視能訓練士協会の情報からも、年収400万から500万あたりをピークに、それ以上の年収を得ている視能訓練士はかなり少数です。
ただし、視能訓練士として企業の営業担当などの職に就いた場合は、営業成績などで給与が大きくUPする可能性は大いにあります。
実際、視能訓練士で高収入を得ている大半の人は企業のメーカーなどに就職しています。
AIに仕事が取られてしまわないか
視能訓練士の強みでもある、斜視弱視の訓練やロービジョンケアなどと言った分野がある限り、どんなにAI化が進んでいても仕事が取られてしまうことはないでしょう。
ただしGPなども自動でできる機械なども出てきており、今は視能訓練士がおこなっていますが様々な眼科医療機器も多く出てきているので「検査だけなら誰でも、資格なくてもできる」という時代が来てもおかしくはありません。
そのため、検査に対する信頼性の高い結果を出せるか、その検査結果をしっかり読み取れる視能訓練士でないと仕事はなくなっていくでしょう。
自分の視能訓練士としてできる仕事内容次第では、将来AI等に代用されてしまいます。
なので検査するだけでなく結果を理解できるようにしたり、斜視弱視やロービジョンの勉強をしっかりおこなうなどの努力は必要です。
他の医療職の人に仕事が取られてしまわないか
視能訓練士は独占業務ではありません。そのため、眼科検査を看護師や臨床検査技師などといった別の職種の方がおこなっても構いません。
眼科手術をおこなう病院では採血などもおこなうので看護師などは必要なので必ず在籍しており、そうなると視能訓練士をわざわざ雇わずに看護師に検査を覚えさせて代用しているケースも多くあります。
視能訓練士が在籍する理由、雇うメリットが見いだせないとどんどん仕事は取られていきますので、少なくとも自分は「視能訓練士にしかできないスキル」を持ち合わせておかないと行き先はなくなる可能性はあります。
なぜ将来性がないように見られるのか
正直、視能訓練士という職は将来性を心配してしまう場面を多く感じます。
それはなぜなのかについて以下に挙げていきます。
独占業務ではないため
先ほど述べたように、視能訓練士は独占業務ではないので看護師や臨床検査技師がおこなっても構いません。中には無資格で視力検査や視野検査をしている人もいます。
そのため誰でもできる仕事だと思われがちで、視能訓練士をわざわざ雇う必要もなく看護師などできる範囲の広い職種の人に眼科検査をおこなってもらうケースも多く、視能訓練士のできる範囲は狭いことから肩身も狭く立場もなく、将来性を感じられないように見えるのでしょう。
就職先を見つけられない人がいるため
求人が決してないわけではないのですが、他の医療職に比べると求人数は少なく自分に合った条件に絞り込んでいくとなかなか合うところがないのは事実です。
視能訓練士として働くにはできる分野が狭いため、選択肢が眼科や一部の企業くらいしかなく、就職先を探しにくくなかなか良い就職先を見つけられないと感じる人もいるでしょう。
自分が将来視能訓練士として働いていくには
視能訓練士の将来性についての心配がある中でも決して需要がないわけではないので、どうしたら視能訓練士として生き残っていけるかについて考えてみます。
検査を一通りできるようになる
検査が一通りできるという視能訓練士は意外に多くはいないです。特にGPといった視野検査、小児検査、ロービジョン全てができる視能訓練士は少ないです。
GPがある病院はだいぶ減ってきてはいますが、小児の患者さんはいなくなることはありませんし、これからの高齢化社会でロービジョン患者さんも増えていきます。この分野に関しては経験や知識が必要なのでそう簡単に無資格の検査員や看護師などの医療職の方ができることではないので自分の強みししておくと良いでしょう。
患者指導ができるようになる
まずは子供の斜視や弱視に関して訓練をおこなうので患者さんへの指導は視能訓練士がおこないます。特にこの分野に関しては医師が苦手としている場合が多いので視能訓練士にすべて任せたいと感じていることが多いです。
ロービジョン患者さんに関しても日常生活の困りごとをヒアリングしながらどの方法でより問題が少しでも解決できるかを考え補装具等を処方します。より良い使い方などの指導をする場面は今よりも多く出てくることでしょう。
より専門性の高い知識を持つ
眼科の中で、高齢化社会と共に白内障の手術件数が増えてきていますが、以前よりも手術後の見え方をより良いものにしようと老眼対応もできる自費の手術があったり、若者に向けたICLといった近視治療もあります。
世の中ではこういった需要が増えてきているので避けて通れない内容でもありますが、視能訓練士の資格を取るための学生の勉強の中では出てこない分野です。
そのため、現場でしっかりと学ぶことができればそれがより専門性の高い知識となり重宝されるでしょう。
スキルを医療の進歩と共にあげられる
医療の進歩はいつまでも続きますが、それに伴う視能訓練士としてのスキルも伸ばしてく必要があります。
学校で習った内容が全てではなく、いつまでも勉強していかなければならないので、これについていけない視能訓練士は不要となってしまっても過言ではありません。
どの分野でも言えることではありますが、時代と共に自分のスキルも上げていく努力はいつまでも必要です。
ちなみに私が学校卒業した15年ほど前には、学校にはまだOCTがありませんでした。
今では考えられないことですが、10年もたてば医療現場は変わることを実感します。
まとめ
国家資格があれば安泰だろうと考えがちですが、だからといって自分に需要があるかは話が別ですし、仕事の幅が狭くても自分次第で生き残れる世界に感じています。
そのためにも自分が視能訓練士にしかできない、自分にしかできないスキルを持ち合わせていくことが将来も仕事し続けられる秘策ですので、日々努力は忘れずに仕事をしていきましょう!